NovelHero #1

今日は、家でのんびりしすぎた様だ。
遅刻しそうな彼だが、どこか余裕がある様に見える。
昨日定期テストが終わり、明日から待ちに待った夏休みなのだ。

自転車にまたがり、夏の坂を下る彼は、アニメの主人公になった様な気分だった。蝉の鳴き声でさえ自分を演出してくれている様に感じていた。

ギリギリホームルームに間に合った。
しかし彼は、昨日の夜更かしのせいで頭が回らない。
たまらず、机に俯きかけたとき、ふと、傷があるのに気がついた。きっと前の誰かが残した物のだろう。
彼は日常的に、よく考えることがある。
この傷を残した先代や、この机を作った人、窓から見える山に鉄塔を建てた人、彼らは今一体何をしているのだろう。そんなことだ。
自分は彼らのことを全く知らないが、必ずそこにいたという事実に魅力を感じるのだ。
彼は、勉強は苦手だが頭を使うのは嫌いではなかった。

友達Aに声をかけられてホームルームが終わったことに気づいた。
こいつとは、中学のとき、クラスと部活と塾が同じで、今では四六時中一緒にいる。

このあとは終業式。
学校の集会は、教員を叩いたり小馬鹿にしたりするツイートで盛り上がるので楽しい。中には、そんな奴らを叩く意見をつぶやく奴もいる。アクセントも必要だとは思うが、どうせ偽善だから放っておく。

終業式が終わり、あとは掃除をして夏休みだ。
去年、Aを待つときに、よく掃除を手伝っていたら、今年度に、去年の担任からクラス委員に推薦されてしまったのを思い出した。
Aとはこのあと遊ぶ約束がある。
さっさと掃除を終わらせてほしかった。
彼は、担任に「推薦するな」と断ってほうきを持った。

最後に机を整えて終わりだ。まだ太陽が真上にあるうちに二人は学校を飛び出した。

二人はこれからボルダリングをする。
1ヶ月前に他の友達に教えてもらい、ボルダリングに行ったが、そのときAは予定が合わなかったため、今日再挑戦するというわけだ。